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●高校留学ニューズレターより
単身留学生たちの帰国進学について
 ― 現状と将来 ―

(Vol.28 春号 2002年5月発行)
はじめに、瀬戸さんをご紹介します。
 瀬戸篤さんは、駿台国際教育センターの事務長として、長期間にわたり、海外子女・帰国子女の教育と進路指導に当ってこられました。一般的に、帰国の大学進学というと、「保護者帯同する子女」、いわゆる‘キコクシジョ’に限定して考えられがちですが、瀬戸さんは、早くから、単身留学生の進路指導に取り組んでこられました。
 今日、オーストラリア・ニュージーランドは、高校生たちが、安心して留学できる国として定着しましたが、つい10年前は、日本の多くの大学事務局においても、まだ、オーストラリア、ニュージーランドの教育制度についての満足な知識をもちあわせていない状態でした。そうした中で、瀬戸さんは、大学に対しては情報提供者として、帰国生に対してはよき指導者として、進路指導にあたってきました。これまでに、瀬戸さんのお世話になったICCの留学生の数はたいへん多く、今日では、オーストラリア・ヴィクトリア州教育庁、ニュージーランドの高等学校間にも‘セト・センセイ’として、その存在は知られています。
Q. いま、大学入試はどのように変化しているのでしょうか?
A.  ちょうど10年前のことです。わたしは「取柄のない子は一般入試」といった放言をはいて、教育熱心なお父さんお母さんの顰蹙をかった記憶があります。これは、18歳人口の減少期の入試を予測したものですが、2002年の現在、まったくそれに近い状況ありますね。
 スポーツ推薦、指定校推薦、公募制推薦、一芸一能推薦、自己推薦、AO入試などと、区別するのもたいへんな数の推薦入試が増えてきました。
文部科学省の2000年度の統計によると、推薦入試を実施する大学は、国公立が144大学、私立を含めると612大学になるようです。これは、全大学の9割をこえています。同年度の推薦入試による入学数は約18万8千人のようです。文科省では、4年制大学の定員の5割までの設定を認めていますし、短期大学は制限なしとしています。
 10年数年前には、推薦といえば、系列校や指定校から大学に進む「指定校推薦」のことでした。また、「スポーツ推薦」というのがあって、これはたいへん古いものですね。すでにわたしの頃にはもうありましたが。同学年や後輩に、早稲田、明治、同志社などに入ったものがいて、当時、わたしは、みんな裏口入学だと思っていました。ところが、現在のように推薦入試の種類が多くなってみると、いかにスポーツ推薦の水準が高いかが分かります。県大会入賞以上、国体参加者とかの水準ですからね。「皆さんごめんなさい、ぼくの見識不足でした。」と恥じる思いです。単身留学生は、これまで、いわゆる「帰国入試」だけにたよって、進路を決めてきました。しかし、これからは、推薦入試、あとでお話するAO入試などを、積極的に活用する時代に入ってきたと言えそうですね。
Q. 単身留学生が利用できる帰国子女枠は、現在、どのくらいあるのでしょうか?
A.  ご質問の趣旨はおそらく、単身留学生が出願できる「帰国子女特別選抜入試」を設けている大学数・学部をお尋ねになっておられるかと思います。いま、手もとに、駿台予備学校の帰国子女部門「駿台国際教育センター」さんから提供いただいた資料があります。これによると、2002年度の受入大学数は、ちょうど200校になるようです。学部・系統別には、わたしも数えていませんが、おそらく500以上になるだろうと推測しています。
Q. その数は増加傾向にあるのですか、それとも減少しているのですか?
A.  2000年度入試では、およそ180校でした。したがって、2年間で、20校ほど増えたことになります。もっとも、この数字には、近年増加傾向にある「AO入試」が含まれているようです。かって、1990年前後に見られたような伸びはありませんね。しかし、もうぼつぼつ、単純に大学数だけを問題視するのはやめたほうがいいと思いますよ。なるほど、受入校の数は大切ですが、それよりも、質のいい大学、それも多くの学部が、留学生に対して帰国枠を開いていただきたいのです。同時に、入学審査方法に、滞在国の教育特性を配慮して、もうすこし柔軟性をもたせてほしいものです。
 たとえば、首都圏の難関校といわれる大学では、慶・早・上智・ICUが留学生に開かれています。ところが、早稲田大学で受け入れてくれるのは、理工・法・教育の3学部だけです。政経・商・文・社会・人間科学といった学部は受験できません。慶応大学はというと、なぜか医学部だけが門戸をとざしています。一方、上智大・ICUでは、全学部・学科・専攻に出願できることになっています。ほんとうにいい大学ですよね、この2校は。
入学審査の問題点としては、早稲田では、出願条件として統一試験の成績を提出しなければなりません。慶応は統一試験の成績を徹底重視する大学です。これでは、AU(オーストラリア)、NZ(ニュージーランド)からの帰国生が、「卒業見込み」で受験するメリットが活かせませんですよね。そうでしょう、帰国入試は9月末・10月初旬に実施に対して、AUとNZの統一試験の実施が11月下旬、成績発表が翌年1月になるのですから。
 わたしは、これからは、単純に受入枠を数えるだけではなく、学部・学科といった専攻対象に着目し、審査方法の改善などを、大学に対して、アピールしていきたいと思っています。
Q. 新しい傾向の「AO入試」とは、どのような選考方法ですか? それは留学生についても有利な方法ですか?
A.  そもそも、 AOというのはAdmissions Officeの略語です。したがって、「AO入試」というのは、「入学事務所による選考」ということになります。実施大学では、それぞれが、AO入試の評価基準を具体的にかかげて、大学の求める学生像をかなり明確にうちだしています。合否の判定は、この大学の要求する条件を学生がどこまで満たしているか、また、学生の学習目的、意欲、将来像などが、大学・学部の求める学生像とマッチするかどうかにあるようです。求める学生像は、大学によってそれぞれ異なりますが、学力一辺倒である一般入試とはまったく異なった選考形式であることだけ共通していると言えそうです。ただ、進路指導の立場では、早稲田、慶応、同志社、立命館などの上位の大学については、なかなか合否予測をたてにくいこと、また、大学によってかなり選考形式が異なることから、わたしなどは、「ADO入試」、あれはどうも分からんな入試などと呼んでいますが。
 では、単身留学生はどう対応すれば言いのでしょうか。敬遠すべきか、それとも積極的に取り組むべきか。わたしは、積極的に利用すべきだと考えます。というのは、AO形式がどんどん拡大していること、また、多くの大学では、国内と海外の卒業の別を問わないし、「単身留学」か「保護者帯同であるか」も問題にはならないからです。となると、AO入試の拡大は、単身留学生の受験校がどんどんふえることにつながりますね。また、選考形式が、書類と面接を中心に審査をおこなうところが多いので、海外滞在中に受験準備勉強をしなくてもすみます。つまり、それだけ真剣に留学生活にうちこめるわけです。
 AO入試実施大学の数に話をもどすと、もともと、AO入試というのは、慶応大学がSFC(湘南藤沢キャンパス)設立と同時に開始したものです。1990年のことで、日本では、これが初めての試みです。10年後の2000年度入試には、国公立4大学を含む75大学が実施。その後の2年間に急増し、2002年度には、国公立16大学、私立270大学が実施しているようです。
 上智大学は、まだ、採りいれていませんが、数年のうちに実施されるでしょう。その際には、特別入試、つまり公募制推薦、帰国生入試といったものがAO入試に吸収されて、一般入試とAOの2本だてになるようです。数年前、入試担当の方からそんな話をききましたよ。入試変革の流れとして、AO入試形式が主流になるのは、すぐ目の前にきているようです。
Q. AUS・NZ留学生が、帰国入試の上で、特に、注意しておきたいことは?
A.  ご承知のように、AUSとNZでは、卒業が12月上旬になります。日本の3月末、欧米の6月上旬に比べてずっとはやいのです。日本の高校3年生が卒業見こみを条件に大学受験できるように、AUS・NZ留学生も卒業見込みで帰国入試を受験できます。欧米からの帰国生が6月帰国してから翌年4月の大学入学までの間、約10か月の‘浪人’期間がありますが、AUS・NZからの帰国生はこれが3箇月間です。これは、たいへん大きなメリットです。しかし、これをメリットにするためには、受験のために帰国しなければなりません。また、それ以前に、受験願書を提出しておかなければならないのは言うまでもないことです。
 入学試験の出願手続きは、日本国内にいてもなにかとたいへんです。やれ、学校の先生に「調査書」、「卒業見込証明書」の作成を依頼する、病院、保健所にてかけて「健康診断書」を作ってもらう、「志願書」に記入する、場合によっては「推薦状」を依頼しなければなりません。これが、留学の場合には、日本と滞在国とのやりとりになるのですから、その気苦労は、申しあげるまでもないでしょう。そこで、入学試験の年つまり最終学年を迎えたら、最低、次のことを心がけておきましょう。
1. 6・7月までに、日本の大学で何を専門に勉強するかを決めておく
2. 6・7月までに、志望する大学・学部を4校から5校選択する
3. 受験休みを何日もらえるかを、在籍校の先生と、はやめに相談をしておく
4. 7月上旬には、それぞれの志望大学から大学案内・入試要項・出願書類一式をとりよせる
5. 帰国受験計画・日程表を作成する(一時帰国で受験する大学だけでなく、卒業後、本帰国してから受験できる大学も含めて作成しておくとよい)
6. 在籍する高等学校に、必要書類(「卒業見込証明書」「在籍期間証明書」「成績証明書」「推薦書」など)の作成を依頼する
7. 出願書類に記入する志望動機(長いものは1000字から2000字)はしっかり書きこむ
8. 願書提出は、出願期限内にかならず到着するように、余裕をもって送る
 項目ごとに説明を加えたいのですが、ここでは、省略させていただきます。ただ、日本の大学との連絡は、本人だけではできないこともあります。この段階では、どうしても、お父さん・お母さんのご協力が必要になります。日ごろ、連絡を蜜にしておかなければなりませんね。
Q. AUS・NZ留学生はどのような準備勉強をすればいいのでしょうか?
A.  まず、留学生が、帰国入試の準備ために、貴重な留学期間の多くを犠牲にするのはまったくつまらないことです。そうでなくとも学校の宿題やレポートにおわれる毎日でしょう。滞在中は、現地の勉強をしっかりなさることを原則にしたいものです。ただ、国内で上位校とよばれる大学ほど志望者が集まりますので、帰国入試においても必然的に競争が生じます。志望が中堅校以上の大学であれば、最低限度の準備は、どうしても避けられません。
 それでは、どんな準備をすればいいのでしょうか。帰国入試では、文系学部の出題形式は、「英語」と「小論文」というの一般的です。留学1年と2年は、現地校の勉強に徹底し、最終学年になれば、日本語つまり国語と仲直りしておく必要があります。現代文だけでいいのですよ。薄手の小論文の参考書を買っていって、それにもとづいて、小論文の書き方を練習しておきましょう。あわせて、現代文の問題集をとおして問題文になれておくとたいへん得策です。帰国入試における「英語」というのは、いわゆる入試英語なのです。したがって、英語総合問題集として編集されたものを一冊もっていって、ひまを見つけて、目を通しておくといいでしょう。もちろん志望大学によっては、こんなものではすまなくなりますが、最低、この程度の準備は必要でしょうね。なんの準備もなく、‘ぶっつけ本番’では、きびしいと思います。
 欧米圏からの帰国生は、6月下旬から始まる予備校の帰国コースにとびこんで、入試までの3、4か月間というもの、集中的に勉強して入試にのぞむのが一般的な準備パターンです。難関校・上位校の入試では、こうした人達を相手に競争することになるのです。
 それから、もう一つ大切なことは、「面接審査」おける対応です。帰国入試において、面接はたいへん重要な意味をもっています。これについては、ICCのご担当が心得ておられて、適切な指導がなされていると思います。一般的な助言としては、どのような質問がなされるのかを聞いておいて、一つ一つの項目について、一度は、よく考えておくことが大事でしょう。
幸い、ICCは駿台国際教育センターと提携し、毎年12月中旬から1月にかけて、ICC留学生のための特別講座を開講してもらっています。小論文・入試英語・TOEFL対策授業を中心に、模擬面接・進路指導が組みこまれた、大変充実した講座になってなっています。現地校の11年・FORM6が修了し、最終学年を迎える人たちには、ぜひ、参加していただきたい講座です。というのは、AUS・NZ留学生が、帰国入試の準備のためにまとまった時間は他にはないからです。また、この期間中に志望校がおおよそ見当がつきますので、現地で、あれこれと悩まずにすむからです。
Q. 最後に、日常生活について、なにか留学生たちに伝えたいことはありますか?
A.  高校留学の目的をたずねますと、「英語の運用能力をたかめたい」とか「日常生活の中で異文化にふれたい」といった回答がかえってきます。言語能力の習得であれ、異文化への憧れであれ、まず、みなさんのこの初志を達成していただきたいと思います。帰国入試というのは、その結果としての選択肢の一つに過ぎません。この主客を転倒させて、帰国入試のために留学生活が犠牲になるようであってはいけないと思いますね。
 今回の話題が、帰国入試であることから、話が、受験から始まりました。なるほど、学歴が本人の将来方向を決定する要因の一つであることについては、決して否定するものではありません。しかし、高校留学は、本人たちのその後の人格形成にたいへん大きな影響をあたえます。それは、学位取得が直接の目的である大学留学よりもはるかに大きいものです。これを、しっかりと頭にいれておいていただきたいのです。その上で、現地での生活上のアドバイスを差上げたいと思います。
 一つは、「現地の生活を積極的にエンジョイしなさい」ということです。これは、誤解されやすいのですが、「楽しい生活環境をはやく作りなさい・学校生活を楽しみなさい・課外活動にも積極的に参加しなさい・現地で多くの友達を作りなさい」といいたいのです。こうした生活をつうじて、「しっかりした言語の運用能力をつけてらっしゃい」、そうして、次が大切なのですが、「何か、これはすばらいいといった感動をもちかえりなさい」を付け加えたいのです。
 矛盾するように聞こえるかもしれませんが、実は、このことが、帰国入試を成功させるポイントだともいえるのです。というのは、つい最近、インターネットで、同志社大学のAO入試をしらべていましたら、2002年度結果画面に、次のような総評を見つけました。同志社大学に限らず、いずれの大学にも通用する、有益なコメントだと考えますので紹介しておきます。どうぞ、充実した留学生活を送ってくださることを願っています。
「留学、海外在住経験やボランティア活動などのアピールをよく目にする。本人にとっては未知の体験であり、強い印象を残したであろうことは理解できるが、それだけなら他の人もやっている。また、学業成績やクラブ活動などにしても、単にがんばったとか一生懸命やったという訴えだけでは、共感するに足りない。経験がずば抜けて豊富であったり能力が優秀であったりする必要はないが、その経験で自分は何を得たのか、その能力を自覚することで自分はどう変わったのか、どのように成長したのかを、冷静に分析し、説明することが求められる。」

−瀬戸さんの教育界での幅広い経験と実績をさらに活かして頂くために、近々進路アドバイザーとしてICCに着任頂くことになりました。今後は、さらに充実した進路サポート体制が整います。
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